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「たっちゃんの店」          
                     越水利江子

 
土佐に『藤娘』という幻の酒がある。
清流四万十川の町、中村市の居酒屋『常連』のご主人、たっちゃんが送ってくれた。
これがうまい!
さほど酒呑みではない私(ウソではない)が、数日で一升瓶を空けた。
聞くところによると、児童文学界では、誰が流したのか
「底なしの酒呑み」という噂が一人歩きしているらしい。
が、それはたんなる噂に過ぎない。
だいたい、京都で、無添加の日本酒『自然酔』ってヤツを買った時も、それなりに楽しめる味だったにかかわらず、気がつけば発酵がすすみすぎて、酢になっていた。
左党が聞いたら、許せないような人間でもある。
しかし、はっきり言って、お酒は大好き!
でも、底なしでも、酒呑みでもない。
せいぜい週に1,2度、ほんの適量(二合くらい)の酒があれば満足。
毎日欲しいとは思わない。
ただ、友人や惚れた男に会うときには、なくてはならないアイテムではある。
美味しい料理にも、欠かせない。
中村の『常連』は、この料理も、ことのほかイケルのである。
店の主人たっちゃんは、昔、少女たちが群がった美少年だったらしい。
同郷の児童文学作家から聞いた話だから、本当だろう。
確かに、ちょっとやそっとの美女がウインクしても、びくともしない風格がある。
言っておくが、風格である。
今も美男かどうかは、私は責任は持たない。
しかし、いい男には違いない。
それは保証する。
料理の味と酒の味も、保証する。
四万十川の流域でしか食べられない旨いものを食べさせてくれる。
うまくすれば、『藤娘』も味わえるかも知れない。
嬉しいニュースとしては、その『常連』の支店が、東京銀座にもできたことである。
これで、出張しても、編集者と一緒に一杯やれるというものである。
え?
ほんとに酒呑みやないの」って?
はい。いちおう・・・