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"Love is best"

                       越水利江子
          
 
「愛はもっとも善きもの」という言葉は、
愛の格言の中で、もっともシンプルで有名なものだが、これは、ロバート・ブラウニングの『廃墟での愛』という作品の中の一節らしい。
あまり流布しているので、もっと世俗的な格言だと思っていた
が、文学からでた言葉だと、教えてくれたのは、
『英語の名言名句』本多正英(研究社出版)という本である。
これが面白い。
この本には、こんな言葉もあった。
True love never grows old.
「真の愛は年を経ても古くはならない」。
以前、何かの雑誌で読んだジョン・レノンの「愛という天からの贈り物は、きれいな植物に似ている。愛を受け取ったなら、飾り棚に放っておいてひとりでに育つとおもってはならない。愛には水と養分を与えてやらねばならないのだ」という言葉もちゃんと紹介されていた。

結婚の格言も、面白い。
Marry in haste, and repent in leisure.
「あわてて結婚すれば、じっくり悔やむことになる」とか、「女が再婚するのは最初の夫がいやだったからだ。男が再婚するのは、初めてもらった妻が良かったからだ。女は自分の運をためし、男は自分の運をかける」というのもあった。
ただし、これは、結婚の格言の中でも男性の見解に分類されている。

妻に対する格言。
A man’s best fortune, or his worst, is a wife.
「男の最良の財産、あるいは最悪の財産は妻である」
もし、互いの連れ合いを財産と呼ぶことができるとすればだが。
これは、妻がわから言っても、同じことだろう。

老年のテーマ。
「五十歳になると誰でも自分にふさわしい顔になる」
「・・・熟年での顔の美しさは澄んだ心の証である」
これには、やがて来るその年代を考え、思わず自分の顔を鏡に映してしまった。

読書、耽溺の危険と題されたページがもっとも面白かった。
「大量の読書は精神を抑圧し、生まれながらに持っている小さな灯を消してしまう。これがこの世にあまりにも多くの無意味な学者のいる理由なのだ」
「他の何もできないよりは、読み書きのできないほうがまだしもましである」
読んだり書いたりが仕事の人間にとっては手厳しい言葉ではないか。
もっとも、作家にあるまじき貧しい知識しか持たない私のような書き手にしてみれば、私のごとき怠け者よりは、誰もが偉いような気もするが。

そういえば、怠惰というページ。
Idleness is the root of all evil.
「怠惰は諸悪の根元」
Of idreness comes no goodness.
「怠惰から善は生まれない」

どれをとっても、生きるとは大変なことである。
格言を気にしていては、とても自分を好きにはなれそうにない。
しかし、人生の岐路で的を射た名句に出会うと、救われた気持ちになり、辛かった経験は癒され、前向きに生きなおす力になることは確かである。

私にも、何か格言は創れないものか。
考えてみたら、拙著『フレンドー空人の森へ』の中で、創っていたではないか。
「こころに殻はない。世界はいつも、あなたに触れている」
「こころがあるとは、わたしのこころを、あなたにそそぎこむことだ」
うーむ・・・。なかなか、ええやないか。
と、自画自賛の海に耽溺していると、能力のページが目に入った。
「凡才は凡才より優れたものがわからないが、才能は瞬時にして天分を見分ける」
追い打ちをかけてきたのが、愚者のページ。
「不惑の歳になり、なお愚かであるのは全くの愚者」
「愚者を小麦と混ぜ、石臼にて砕けども、愚者と愚かしさを分離することかなわず」・・・・だそうな。
さて、お燗でもつけて、今日のことは忘れよう。
え?
「泥酔は、一時の自殺である」やて?
もう! ほっといてんか。